ABOUT US

Story

エクアドルは南米赤道直下にある日本の約3分の2、人口約10分の1の小国です。6000 メートルを超えるアンデスの山とそれを取り囲む山麓の雲霧林から、東部アマゾン源流地帯の熱帯雨林や西部海岸地帯のマングローブ林まで、様々な生態系がモザイクのようにこの国をつくっています。

しかし、この地上の「楽園」エクアドルは同時に、近年世界でもっとも急激な森林破壊に見舞われている国でもあります。すでに9割以上の原生林が失われたとも言われています。

そんなエクアドルで今、その豊かな文化や生物多様性を損なわない、持続可能な地域発展のあり方を模索する動きがあちこちに生まれ、ひとつの大きな流れになろうとしています。

鉱山開発、石油開発、環境破壊による経済発展を受け入れるのではなく、足元にある資源と手、身体を使って生み出されるもの。環境を守りながら暮らしを立てようとしている作り手の人たちと一緒にものづくりをすることでSlowWatercafeも、日本からその流れに連なっています。

そして、みなさまに、顔と顔のみえる関係だからこそできる、おいしくて、心おどる、すてきなものをお届けします。

Member

渡邉 尚

スローウォーターカフェ有限会社、および都市と農村の交流に取り組むNPO法人「トージバ」の代表。大豆を育て味噌を作る交流活動「大豆レボリューション」などの主催も経験。
東京から宮崎に移住し、4人の子供と馬を共に暮らす。趣味はサーフィン。

藤岡 亜美 (右)

スローウォーターカフェ創業者。在学中に文化人類学のフィールドワークでエクアドルを訪れ、生物多様性に富んだ現地の村の生活様式に感銘を受け、環境保全活動とスローウォーターカフェの立ち上げに従事。2021年逝去。

Philosophy

 「フェアトレード」は、1970年代にヨーロッパのNGOなどを中心に始まった運動です。「公正な貿易」「草の根貿易」と訳され、日本でもこの運動に取り組む企業やNGOが増えています。コーヒーやココア、バナナなどの生産者と直接に取引きをし、市場に左右されない一定で最低限の価格を保障し、生産地の環境や、生活の向上に寄与することを目指す、新しい貿易のあり方です。  
 現在、コーヒーなどの換金作物の流通は生産者から消費者の間に、多くの仲買人が存在しており、価格の決定権は生産者にはありません。実際に、コーヒーの国際相場が下落した為に、生産者の取り分が減り、コーヒーの栽培を続ける事ができなくなったこともあります。また、このような南北の格差は農産物の取引に限りません。鉱物資源、森林資源の搾取、など「先進国」の暮らしのあり方は、経済のために自然環境を破壊し、労働者を搾取するような産業を、南の国に押し付け続けてきました。
その結果、エクアドルでは、既に90%以上の原生林が消滅したと言われています。
 スローウォーターカフェ(有)は、日本とエクアドルで環境運動を展開する環境=文化NGOナマケモノ倶楽部から生まれた企業です。エクアドルで、環境破壊から森を守りながら、商品を作る生産者と共に商品を共同企画、輸入、販売(卸し/小売)をしています。環境に配慮した産業を選びとった現地の仲間たちに学び、”私たちが作りたい文化や暮らし”に必要なものづくりを心がけています。できあがった商品を、産地南米エクアドルの景色、音、匂い、そして、”ものが作られる背景を知ることは愉しい”というメッセージと共にお届けすることに尽力しています。

 毎年、『マシュピの森のチョコレート』シリーズの利益の一部をナマケモノ倶楽部に寄付。こうして有限会社としての活動、NGO活動の双方からの取り組みにより、本来ある豊かさを見失っていく貿易や経済のあり方ではなく、『つながることで、お互いの暮らしや文化をより豊かにしてゆく』ような、もう一つの貿易のかたちを実践します。

会社概要

会社名:スローウォーターカフェ有限会社 Slow Water Cafe Ltd.
代表者名:渡邉 尚
資本金:300万円
所在地 本社: 〒136-0071 東京都江東区亀戸1-18-14-401
    宮崎オフィス:〒889-3311 宮崎県串間市市木726
お問合せ先
Tel:0987-77-0747
Fax:03-3683-6822
Mail:お問合せフォームをご利用ください

お電話可能な時間帯:平日10am~17pm

彼女が作った、カブヤの赤いブレスレッドを見ると、わたしはその景色を思い出す。わたしたちにとってとても特別な、坂道と世界のはなし。

彼女たちはカブヤ(サイザル麻)とよばれる大きな葉から、糸になる繊維を取り出す。かぎ針や織り機でベルトやバッグ、様々な民芸品を編む。染色は近所の森でさがした種や樹や草や花。わたしはそれを買い付けては日本で販売する。注文すると毎週水曜日の会議でみんなに伝えられる。馬にのって、あるいて彼女たちはあつまる。「仲間がいるから教えあうことができる。だから仲間がいてよかったって思う。」お互いのコトをそういってる。
運送の費用がかかっても大丈夫なのは、エクアドルと日本に経済的な格差があるからだ。それでも彼女たちは仕事に見合った報酬を得て、とくに教育や医療を、暮らしのなかで充実させることができる。わたしもお金を稼ぐことができる。それは「フェアトレード」って呼ばれている。値段の付け方は「フェアだ」ってことになってる。
女性グループのリーダーノルマとは、2年前からの友達だ。去年は水筒ホルダーを一緒に作った。日本ではガールスカウトが、それをもつことで環境問題まで学んでる。その写真をみせると、自分の子どもを見るような目で笑った。彼女をみているとお母さんって素敵だなって思う。
会計はいつも彼女とする。しかし、わたしたちは2人とも計算が苦手だ。そのくせいつも計算機を忘れるから、会計にえらい長い時間がかかる。のんびりやっていると日が沈んで「また明日」なんてことにもなりかねない。
その日彼女は草っぱらの斜面に座ってかぎ針で何か編んでた。ジョルジとダヴィッドは顔を真っ黒にして坂道を駆け回ってた。
ここでの私のいつもの仕事は、この2人と遊んでることだ。お母さんが商品の数を数えてる間、退屈しないように、泣き出さないように。それは「仕事」なのかそうじゃないのか分からないんだけど。


その日はもう日も暮れそうで、嫌いな計算は「マニャーナ」、明日に持ち越し、わたしとアヤさんもその遊びに加わることにした。子どもの頃よく公園でした遊びを思い出した。段ボールに乗って滑り降りるやつだ。私は辺りを歩き回ってそれが落ちていないか探したけど、やっぱり山にそんなものあるはずがない。考えた末にちぎったカブヤの枯れ葉は、犬に持ってかれてしまった。ハッとしている私を見て、みんな大笑い。仕方ないのでトウモロコシのはいってたずた袋で代用。2人を乗せて滑り降りた。


坂の上からは、オーガニックのレモン畑や、一時停止の牛たちや、原生林がみえた。その森には数えきれないくらいの鳥や、虫や動物たちがいるはずだった。ゆっくり傾いて行く夕日が、刻々違った風景を投げかけた。目に見えるよりもずっと沢山のことがみえて、5分をまるで1日のように感じた。景色が時間の流れを変えてた。だけどジョルジとダビッドは、こんな世界はあたりまえといった感じで、犬と草っぱらを転がり続けている。


「ここは子どもにとって素敵な環境だね。」アヤさんがノルマにいった。それはもっと大きな世界を指してのことだったんだけど、ノルマはこう答えた。「そうね。家の前は砂埃が沢山あるからこっちのほうがいいの。だからカブヤを持ってきてここで編んでるのよ。」
それはすごく的外れな答えだった。わたしたちにとってどんなに特別で感動的な状況なのかってこと、彼女には分かんないのだ。でも次の瞬間、その答えと景色がつながった。レモンや犬や、風や子どもの声や、曖昧な空の色。周りの全部がすうっと私のなかにしみ入ってきた。泣きそうな心地がした。あえて言葉にするなら、「平和」を感じたんだった。それは、「戦争の反対」とは違う「ほんとうの平和」。
会話はそこで途切れた。多分彩さんも同じことを感じてたと思う。


世界とは「いまここ」のことで、平和は「いまここ」にしかないもの。例えば、子どもが遊びたい場所に一緒に居るように、目の前の人を愛すること。それよりも大きなことなんてないし、大事なことなんてないんだ。
ノルマはカブヤを編み続けてた。坂道を風が通り抜けて、ずた袋が舞い上がった。


この人はわたしにとって大事な友達で、私が気づかない世界を見せてくれる人だ。子どもとのつながり、森とのつながり。はっとするような言葉でそれを教えてくれる。そして、自分ではつながれない私を、そこにつなげてくれる。


彼女が編んだお守りのキーホルダーをつけて、ひとり、ヒューストンの空港に着く。「9/11 Huston Remembers」って垂れ幕を見上げた。星条旗をディフォルメした派手派手なやつだ。これも「ある世界」のなかで平和を訴える声。でもそれが声高に叫んでたのは、あの坂道にあったような、「絶対の平和」なんかじゃなかった。
人が宇宙に飛び立つ街にもないような世界を、わたしの友達は自分のなかにもってる。
絶対的に大事なことを、まず確認しよう。分かることから確かめよう。わたしの「世界」は何処だろう。それはとてもあいまいだ。そこには彼女の世界がひつようなんだ。少しでも近づきたいと思うんだ。

わたしたちは値段を決めるときいつも、「そっちが先につけてみてよ」って言い合う。しまいにはふきだしてしまう。なにがフェアだなんて本当は分からない。でも確かなことがひとつある。
ノルマのカブヤ編みのなかには、あの坂道みたいな世界があって、神様がいる。そこからしか感じることのできない、そこからしか伝えてゆけないことがある。そのつながりだけは絶対で、わたしの世界だ。

藤岡亜美